2020年7月のGoogle検索トレンド調査結果【調査対象89,246ワード】

ここ数ヵ月の間で、コロナが人々に様々な行動変容をもたらしたことは、疑いようのない事実となっています。
密状態の回避を目的としたリモートワークや食品テイクアウト文化の浸透、少人数行動など、例を挙げればキリがありません。
この際、人々の行動や考え方の変化の一部は「検索エンジン上でのKW検索」という形で定量的に計測可能な数値として表面化します。
いわゆるビッグデータと呼ばれるこれら検索トレンドデータは一般人には遠い存在として認識されがちですが、Googleトレンドやキーワードプランナーというツールで把握することが出来ることをご存知でしょうか。
今回のブログでは上記ツールからの取得データ、およびBIツールtableauを活用しつつ、35カテゴリ計89,246にも及ぶキーワードの直近検索トレンドを可視化してみました。
個人的には、KW単体での検索トレンドについて言及する記事はこれまでも見ることがありましたが、カテゴリ別に見ていくことで新たな発見も得られ有益であったため、ここの場で広く共有してみたいと思います。
非常に長い記事なので、以下目次の中から気になる分野だけチェックするか、時間のある時に見て頂くことを推奨します。
検索トレンドの調査方法
調査にあたっては前述の通りGoogleトレンドとキーワードプランナーを活用しています。
ツールを2個に分けた理由としては、両ツールにはそれぞれ長所と短所があるためです。
Googleトレンドの長所:KW単位で正確な検索トレンドの把握が可能
Googleトレンドの短所:膨大なKWのトレンドを調べることは作業労力面から非常に難しい
キーワードプランナーの長所:膨大なKWの検索が可能
キーワードプランナーの短所:数値データの正確性に欠ける場合がある
そこで両ツールの良い所を取って、キーワードプランナーで膨大なKWの検索トレンドデータを取得し、気になる数値変動をしているカテゴリやKWについては個別にGoogleトレンドで確認をするという手法を選択しました。
キーワードプランナー上での個々のキーワードに関する数値は若干正確性に欠けるケースがあるとは言え、各種キーワードをカテゴリ単位に集約して数値変動を追う事で、その数値信頼性は大きくアップするということです。
なお、調査対象となる35カテゴリ、計89,246キーワードは2020年6月時点で実際に検索数が多かったキーワードを独自手法で収集しているため、抜け漏れもある程度存在するであろう点はご容赦くださいませ。
また、キーワードプランナーのデータは7月上旬過ぎにならないと6月分が出てこないため、以下の調査結果は2020年6月分の数値となります。
つまり、速報性は劣るものの、情報網羅性が高いデータと見なしていただければと思います。
カテゴリ別検索数の増加率(2020年6月実績)
それでは上記前提の下、まずはキーワードカテゴリ別実績データから見ていきましょう!(各種画像はクリックで拡大表示可)
上記散布図の中央付近の込み合った領域の拡大図は以下の通りです。
散布図のデータを表形式で出力したものは以下の通りです。
散布図の各プロットは各種KWの属するカテゴリを示しており、併記されている数値およびプロットの大きさは、各カテゴリに含まれるKWの合計検索回数を示しています。
また、縦軸は各カテゴリ別KWの合計検索回数が前年同月比でどの程度変化したか、横軸は前月比でどのように変化したかを示しています。
増加率を前年比と前月比に分けた理由は、そのトレンド変化が短期的な動きなのか長期的な動きなのかを明確化するためです。
例えば「水着」や「花火大会」というキーワードが5月から6月にかけて増加していたとしても、それは季節柄当然であり、トレンドとしては注目に値しないと考えるのが妥当でしょう。
ただし、これらKWで前年比検索数が大きく増減しているとすれば話は別です。
このように前年比と前月比の増加率を分けて見ると、より正確なトレンド判断が可能になるということですね。
なお、上記の表には「前月比増加率×前年比増加率」の計算結果であるトレンド指数という数値も記載しています。
この数値が1を大きく超えている程、トレンドと呼ぶにふさわしい動きを見せているということが言えるでしょう。
各種キーワードカテゴリの属するトレンド領域
前述の散布図は前月比増加率、および昨年比増加率が100%を超えているかどうかにより、四象限に分割することが出来ます。
ここでは下図の通り、四象限をホット領域、コールド領域、盛り返し領域、ピーク越え領域と読み替えつつ、それぞれの領域に属するキーワードカテゴリを見てみましょう。
ピーク越え領域に属するキーワードカテゴリ
まずは、上図の黄色枠で示されるピーク越え領域(前月比で検索減、前年比で検索増)に属するカテゴリをいくつかピックアップして、その詳細を見てみましょう。
ピーク越えとは言え、この領域には前年比で大きく検索数を伸ばしているカテゴリが複数存在しています。
- オンライン(前月比:47%、前年比:381%)
- テレワーク(前月比:48%、前年比:447%)
- テイクアウト(前月比:44%、前年比:434%)
- アウトドア、キャンプ(前月比:97%、前年比:131%)
- 食品、料理(前月比:76%、前年比:142%)
- 掃除(前月比:81%、前年比:158%)
- ペット(前月比:82%、前年比:141%)
- ガーデニング、花(前月比:75%、前年比:171%)
今月、この領域に属するカテゴリが多いため、手厚めに見て行きます。
「オンライン」カテゴリの検索トレンド
本カテゴリに属するキーワードの過去13ヵ月間における月別検索数の推移は以下の通りです。
青線の数値はカテゴリ配下のキーワード検索数の合計値、赤線および緑線は前月比および前年比の検索数増加率、オレンジ線は前述のトレンド指数(前月比増加率×前年比増加率)を示しています。
「オンライン」カテゴリの検索数は4月をピークとしつつ、6月は4月の半分以下まで低下していますが、前年比では381%と非常に高い伸びを見せています。
特に4月は「オンライン〇〇」の検索が非常に多い状況でした。
ここ数ヵ月、特に検索が大きく増加したオンライン系ワードとしては、「オンライン婚活」「オンライン名刺交換」「オンライン よしもと」「オンライン脱出ゲーム」など、多数のキーワードを挙げることが出来ます。
「テレワーク」カテゴリの検索トレンド
「テレワーク」カテゴリの検索数は4月をピークとしつつ、6月は4月の1/4以下まで低下したものの、前年比では447%と非常に高い伸びを見せています。
テレワーク関連語句のバリエーションはあまり多くは無いため、「テレワーク」や「リモートワーク」単ワードの検索数に大きく影響を受けているといった状況です。
「テイクアウト」カテゴリの検索トレンド
「テイクアウト」カテゴリの検索数は5月をピークとしつつ、6月は5月の1/2以下まで低下していますが、前年比では434%と非常に高い伸びを見せています。
キーワードの内訳を見てみると「飲食店名×テイクアウト」や「食品名×テイクアウト」といったワードが目立っていましたが、全体的な傾向としてはどちらも検索数が低下傾向です。
ただ、「丸亀製麺 テイクアウト」や「木曽路 テイクアウト」など、一部飲食店名に関しては検索数が多い状況を維持できており、テイクアウト需要を継続的にうまく取り込めていると言えそうです。
この辺は、企業によって明暗が分かれそうですね。
「アウトドア、キャンプ」カテゴリの検索トレンド
「アウトドア、キャンプ」カテゴリは近年のキャンプブームに伴い、コロナ前から継続的に前年の検索数を上回る状況が続いていましたが、コロナ禍においても密な状況を避けやすいレジャーとして、その流れは継続しています。
特に外出自粛期間においては「おうちキャンプ」等の検索が大きく増加いたしました。
また「キャンプ」や「焚き火台」等のキーワードに関しても、季節的要因と相まって検索数がじわじわと伸びています。
「食品、料理」カテゴリの検索トレンド
「食品、料理」カテゴリの検索数はコロナ前から前年の検索数を上回る状況が続いていましたが、コロナ禍における在宅時間の増加によりその流れがさらに加速しました。
各種料理名称での検索は全体的に若干ながら前年検索数を上回っており、ネットでのレシピ検索は増加傾向と言えます。
また、直近で「コウケンテツ」さん、「リュウジ」さんといったような料理研究家名での検索が大きく増加した点も特徴的であり、コロナ禍でのメディア露出が増加した点が影響していそうです。
在宅時間増加の流れもあってか「手抜き料理」の検索がここ10年で最大の検索数となりました。(以下グラフは過去5年間の実績推移)
その他、特に5月においては「フードロス 通販」の検索数が大きく増加しました。
直近では検索数減少傾向となっていますが、未だにフードロスは各地で深刻な問題ともなっているため、こういった通販サイトは積極的に利用していきたいものです。
フードロスの改善に貢献するサイトの一例としてはうまいもんドットコム等が挙げられますので、是非覗いてみてください。
「掃除」カテゴリの検索トレンド
「掃除」カテゴリの検索数5月のGWを中心に前年と比較しても大きく増加しましたが、現在も前年比で検索が多い状態は継続しています。
内訳を見てみると、「エアコン 掃除」や「換気扇 掃除」(換気扇は12月の年末大掃除需要には及びませんが)といった空調機器回りの掃除検索が多い点が目立ちます。
この辺もコロナの影響を大きく受けていると言えそうですね。
「ペット」カテゴリの検索トレンド
「ペット」カテゴリの検索数もコロナ禍において増加傾向となっています。
中でも、「子犬」「子猫」「ハムスター」などの小動物系の検索が増加傾向であり、この辺も在宅時間をペットと楽しく過ごそうといったニーズが表れているように感じます。
「ガーデニング、花」カテゴリの検索トレンド
「ガーデニング、花」カテゴリについても、コロナ禍において大きく検索増加傾向となっています。
おうち時間を楽しく過ごそうというニーズが継続的に表れている印象です。
具体的なキーワードとしては、各種植物名や「家庭菜園 ベランダ」「観葉植物 初心者」等が挙げられます。
何となく、トレンド分析のフォーマットはお分かりいただけたでしょうか。
以降、残り3領域の中から特徴的なKWカテゴリをピックアップしつつ、どんどん参りましょう。
盛り返し領域に属するキーワードカテゴリ
盛り返し領域(前月比で検索増、前年比で検索減)に属するカテゴリをいくつかピックアップして、その詳細を見てみましょう。
この領域にはコロナの影響を多大に受けながらも、直近で回復傾向のカテゴリが該当します。
- 旅行(前月比:175%、前年比:51%)
- 結婚(前月比:110%、前年比:64%)
- スポーツ(前月比:132%、前年比:65%)
「旅行」カテゴリの検索トレンド
「旅行」カテゴリについては、4月をボトムとしつつも検索数は徐々に増加傾向となっていますが、前年比では51%の検索数と厳しい状況です。
また、賛否両論はあるものの7/22からGo To トラベルキャンペーンが開始することもあり、これから更なる大変動が予想されます。
なお、内訳のキーワードを見てみると、「国内旅行」か「海外旅行」かによって検索数の回復状況が大きく異なることが読み取れます。
ただし、「国内旅行」の中でも密な状況となりやすい「バスツアー」については検索数の戻りが鈍い状態です。
国内旅行系サイト名と海外旅行系サイト名の検索数も同様です。
その他「スーツケース」などの旅行関連グッズ名での検索が回復していない点も特徴的と言えるでしょう。
「結婚」カテゴリの検索トレンド
「結婚」カテゴリについては、4月以降で若干盛り返してきているものの、3月近辺から前年比で大幅に検索数が減少している状況が続いています。
主な傾向としては「結婚式」「披露宴」等の検索トレンドが示す通り、ボトムは超えたものの苦戦中という印象です。
また「結婚式 招待状 返信」の検索数が若干上がり始めたことからも、結婚式の計画自体も徐々に進みつつあるようですが、まだ前年度の検索数には遠く及びません。
一方、「結婚指輪」は前年実績以上の検索数を見せております。
その他、「ガーデンウエディング」も前年同等の検索数となっていました。
密な状況を避けた上での結婚式というニーズは大きそうですね。
「スポーツ」カテゴリの検索トレンド
「スポーツ」カテゴリも前年実績割れの状況が継続していますが、徐々に回復傾向となっています。
季節的な影響もあるものの、具体的には「プロ野球」「新日本プロレス」など、多数のキーワードで検索増加となっていました。
一方、「サイクリング」のようにそもそもコロナの影響をあまり受けていないように見受けられるスポーツも存在しています。
その他、「スポーツマスク」の検索が大きく増加している点は特筆事項と言えるでしょう。
ホット領域に属するキーワードカテゴリ
ホット領域(前月比、前年比共に検索増)に属する中でも、特に傾向が顕著なものとしては以下キーワードカテゴリが挙げられます。
- 投資(前月比:108%、前年比:150%)
- 通勤、通学(前月比:108%、前年比:158%)
- アルバイト、パート(前月比:120%、前年比:104%)
- 転職、退職(前月比:115%、前年比:100%)
「投資」カテゴリの検索トレンド&象徴ワード
「投資」カテゴリは前月比、前年比共に伸びているものの、特に前年比の伸びが150%と顕著に高くなっています。
コロナ禍での株価乱高下に伴い「株価」や「ダウ」への関心の高まりが3月以降継続している他、「ジュニア nisa」などの検索が増加した点が本カテゴリにおける検索数増加の主要因と言えます。
「通勤、通学」カテゴリの検索トレンド
「通勤、通学」カテゴリは前月比、前年比共に伸びているものの、特に前年比の伸びが158%と顕著に高くなっています。
過去1年間の月別トレンド推移は以下の通りであり、4月に大きく減少したトレンド指数が5月、6月と増加傾向となりました。
休校措置の解除の伴い「通学 リュック」などの通学関連のキーワードに検索増加傾向が見受けられた点が変動の主要因と言えます。
例年「通学 リュック」は3月に大きな検索増加傾向を見せた後に通常レベルに落ち着くのですが、今年に限ってはGW以降、例年より検索数が多い状態が継続しています。
「アルバイト、パート」カテゴリの検索トレンド
「アルバイト、パート」カテゴリの検索数は前年比では同程度であるものの、前月比の伸びが120%と高い数値を示しています。
過去1年間の月別トレンド推移は以下の通りであり、4月、5月と低めであったトレンド指数が6月は1.2程度まで増加しました。
「スタバ バイト」や「ユニクロ バイト」など、いち早く営業自粛を解除した企業に関するアルバイト検索を中心に検索増加傾向が見受けられた点が変動の主要因と言えます。
「転職、退職」カテゴリの検索トレンド
「転職、退職」カテゴリの検索数は前年比では同程度であるものの、前月比の伸びが115%と高い数値を示しています。
過去1年間の月別トレンド推移は以下の通りであり、4月に大きく落ち込んだトレンド指数が、6月は1.1程度まで増加しました。
低下傾向であった「転職サイト」の検索数が回復してきた点などが変動の主要因と言えます。
「転職 テレワーク」の検索が増加している点は特徴的です。
また、少々ニュアンスはズレますが「失業保険 会社都合」の検索数が多い状態が継続している点も気になるところです。
コールド領域に属するキーワードカテゴリ
コールド領域(前月比で検索減、前年比で検索減)に属するカテゴリは、今回の調査対象の中だと以下1件のみでした。
この領域にはコロナの影響を多大に受けており、直近で回復傾向が見受けられないカテゴリが該当します。
- オリンピック(前月比:83%、前年比:19%)
「オリンピック」カテゴリの検索トレンド
この状況下では仕方のない事ですが、「オリンピック」カテゴリは検索の減少傾向が非常に強くなっています。
「オリンピック」「オリンピック チケット」など、オリンピックに関する検索は軒並み大幅な縮小傾向でした。
一方、「2024 オリンピック」については徐々に検索が増加傾向ともなっています。
その他気になる検索トレンド
これまで、各カテゴリの属する領域ごとにその傾向を見てきましたが、カテゴリ横断でその他の気になるトレンドの一例を見てみましょう。
ピックアップワード①:日産キックス
6月後半から爆発的に検索が増加しました。
検索数の多さ(2020年6月で約301,000回の検索)と前月からの伸び率を鑑みると、今回調査した中では6月のNo1トレンドワードとも言えそうです。
ピックアップワード②:乳酸菌化粧品
6/7週に特に大きな検索数のスパイクが見受けられました。
ピックアップワード③:新築 戸建て
「新築戸建て」と「新築マンション」を比較すると、新築戸建て側に検索数の伸びが見受けられます。
この辺はもちろん人それぞれではありますが、コロナ禍を経て以前よりも戸建て志向が強まった可能性があります。
ピックアップワード④:デロリアン 中古
6/12から3週連続でバック・トゥ・ザ・フューチャー3部作の放送がありました。
「デロリアン」は映画で登場するタイムマシンの車の名前なのですが、これはかつて実在したデロリアン・モーター・カンパニーで実際に唯一製造された自動車「DMC-12」がベースとなっています。
映画の放送を受け、この車が欲しいというニーズが検索行動になって表れたものと考えられます。
個人的に大好きな映画なので、独断で無理矢理ピックアップしました。
問題は、高くて買えないこと。。。
参考外部リンク:グーネットのデロリアン販売ページ
ピックアップワード⑤:時刻表
時刻表というキーワードの検索トレンドは、実際に人々が電車を使用するシチュエーションで多く検索されます。
実際、以下の通り時間帯別に見てみると午前7時近辺で大きく検索が増加しています。
緊急事態宣言下においては「時刻表」の検索が少なかったことから考えても、このワードの週別検索数トレンドはテレワーク実施状況のトレンドと反比例するとも言えそうですね。
ちなみに、過去5年間における「時刻表」の検索数は以下の通りであり、その検索数はコロナ前の6割程度となっています。
ピックアップワード⑥:風邪薬、咳止め、中耳炎
風邪薬、咳止め、中耳炎などの検索数が軒並み低下傾向となっています。
もちろん季節的な影響もあると思いますが、それを加味しても前年比での検索数が明らかに少ないです。
各種要因が想定されますが、人々が外出を避けたり、マスクを着用することで風邪や派生する病気を未然に防げている可能性が高いと感じます。
例年よりも既存の風邪にかかる人が少ないという事実から、コロナに関しても何も対策をしない場合よりは多少なりともコロナウィルスの蔓延を防げていると考えるのが自然でしょう。
苦しい状況は続きますが、一刻も早くコロナの特効薬が開発されることを切に望みます。
まとめ
といった流れで、各種カテゴリ別に検索トレンドを分析してみました。
本来は個人の趣味の範疇に収める予定だったのですが、いくつか面白い傾向も見えてきたためブログという形で公開してみた次第です。
コロナ禍における意外なトレンド変化など、新たな気づきを感じて頂ける部分があったなら幸いです。